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20147/6

青色は赤色よりも暖かい?

  • 今回はニューロマーケティングの事例を紹介する予定でしたが、NTT時代の同僚が、温度と色の知覚認知に関する面白い研究報告をしましたので、簡単に紹介します。

色と温度の関係、皆さんよくご存知かと思います。
例えば、赤やオレンジなどの暖色系は暖かく感じ、青や黒などは冷たく感じるなどです。

ところが、物を触ったとき、「赤色の物」よりも「青色の物」の方が「暖かい」と判断されたのです。

実験はまず、ホットプレートに手を置いて、手の温度を一定にします。
これは、環境や参加者によって異なる手の温度差を、可能な限り一定の条件(特に温度)にするためです。
次に、温度を可変できる装置(ペルチェ素子)の上に赤色、または青色の紙を敷き、その紙の上に手を置きます(図1参照)。
そして、装置の温度を変化させていったとき、「暖かい」と答えた時の最も低い温度を比較しました。
なお、目を閉じた条件も対照実験(Control)として評価しています。

結果は、このようになりました(図1参照)。

 20140706_fig1図1

参加者12名から、青色の物は赤色の物と比較して、約0.5度低い温度で「暖かい」と判断されました。
著者らはこの理由として、赤色の物はそもそも暖かく感じるはずだという期待(思い込み)があることによって、赤色はある一定上温度が高くないと暖かいと感じなかったのではないかと考えています(暖かいという期待が高いため、暖かいと感じる温度を高く設定)。
逆に、青色の物は冷たく感じるはずだという期待によって、低い温度でも暖かいと感じやすくなったのではないかと考えられます(思ったより冷たくない→暖かい)。

さらに、この研究では、物の色に加え、手の色を変えた場合も実験しています。
手の色は、プロジェクターで色を手に投影して作り出しました(図2参照)。

結果は、このようになりました(図2参照)。

20140706_fig2図2

なんと、さきほどと逆の結果です。
赤色の手が、青色の手よりも低い温度で暖かいと判断されました。少し解釈が難しいですが、手の感知温度と物の感知温度との差だと説明しています。
例えば33℃の物を触るとき、赤色の手は暖かいので、物と赤色の手の温度差はそんなにないと感じ、低い温度で暖かいと判断したのではないかということです。
逆に、青色の手は冷たいので、物と青色の手の温度差は大きいと感じ、より高い温度で暖かいと判断したのではないかと考えられます。

今回は色(視覚)と暖かさ(触覚)の関係でしたが、物理的には同じ条件であっても、ヒトの知覚や認知によって感じ方が変わってしまうことがいっぱいあります。
物と音、色と味などです。
私たちは、この五感を巧みに組み合わせた感覚から、世界を認知しています。
ところが、感覚を組み合わせた認知は、ちょっとしたことで逆転する不思議な仕組みをもっています(今回の、青色の物は赤色の物よりも暖かく感じるなど)。

びっくりですよね。
しかし逆に、こういった仕組みを知っていると、より訴求性のある広告宣伝や、より使いやすい商品の開発、より効果的な教育など、いろいろな分野に役立てる事ができるのです。
ですから、知覚認知の脳科学や心理学の知見は、積極的に取り入れて欲しいとも思っています。

今回に限らず、マーケティングに活用できるような研究から、えっ!というような小噺的な研究まで、どしどし紹介していきます。
では、また次回に!

(*1)紹介した研究の原著はこちらです。
図1-2は、原著のFigure 1-2を改編しました。
Ho, H.-N., Iwai, D., Yoshikawa, Y., Watanabe, J. & Nishida, S. Combining colour and temperature: A blue object is more likely to be judged as warm than a red object. Sci. Rep. 4, 5527; DOI:10.1038/srep05527 (2014).
http://www.nature.com/srep/2014/140703/srep05527/full/srep05527.html

(*2)専門的には、2つの感覚からの知覚認知をクロスモダリティ、3つの感覚からの知覚認知をマルチモダリティと呼び、盛んに研究が進められています。

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