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脳の大きさで消費者を分類?

 

消費者を分類することは、重要な分析の方法です。

アンケート、視聴率、顧客情報、POS(Point Of Sale)などなど、目的に応じた消費者の分類が様々されていますが、基本的には3つの視点で分類されています。性年代や居住区といった特徴で分類する「デモグラフィック(人口統計的特性)」、気候や地域の人口といった特徴で分類する「ジオグラフィック(地理的特性)」、趣味や価値観といった特徴で分類する「サイコグラフィック(心理的特性)」です。

昨今特に、私たちの消費や生活のあり方が急速に変化し、複雑化が進んでいることもあって、より深く消費者を知ることができるサイコグラフィック分析の重要度が増しています。性年代などのデモグラフィック分析からのみでは、効果的なインサイトを得ることが難しくなっているのです。

 

そんな中、つい先日、サイコグラフィック分析をさらに有効にする脳の特徴が報告されました。ワイン王国フランスとPlassmann博士と、白ワインがおいしいドイツのWeber博士らの研究成果です。

実験は、同じワインを高い価格または安い価格で提示し、おいしさを評価しました。ワインは同じですので、おいしさも同じ評価となるはずです。ですが、これまでに実施された類似の実験では、そうなりませんでした。高い価格を提示したワインがよりおいしく評価される結果を得ました。全く同じワインですが、提示される価格によっておいしさ=味の価値が変化するようです。

 

今回の研究では、さらに脳を評価しました。

その結果、脳の構造がワインの評価に影響を及ぼすことがわかりました。脳の構造とは、脳の形や大きさのことです。

感情的・報酬に関係して活発に活動する脳の部位が大きい人は、価格によって味の評価が影響し、感覚・内省に活発に活動する脳の部位が大きい人は、価格による味の評価が影響しないことがわかりました。

また、同時に実施したアンケート調査の結果から、感情的な特徴を回答した参加者は、感情的・報酬に関する脳の領域が大きく、また論理的な特徴を回答した参加者は、感覚に関する脳の領域が大きいことがわかりました。つまり、自分が思う特徴は、脳の構造の特徴でもあったのです。

 

びっくりですね。

速筋の割合が多い人は短距離走が得意で、遅筋の割合が多い人は長距離走が得意といったような身体と機能の生理学的特徴の関係が、脳(身体=筋肉)と心理的(機能=短距離走・長距離走)な関係の特徴にもあったのです。

感情的により考えるから、論理的により考えるから、それぞれの脳の部位が大きく発達したかもしれませんが、私たちの脳の大きさによる違いが心理的な価値の判断に影響していたことは驚くべきことです。

 

今後、マーケティングでは、消費者の購買嗜好を分類するサイコグラフィック分析の質問事項として、感情的・論理的属性を尋ねることは必要事項となりそうです。そして、その結果を踏まえて、感情的属性の人には、価格、キャンペーン、特典など感情に働きかける訴求を、論理的属性の人には、機能、競合比較、価格の妥当性など論理的に訴求するターゲット別の施策が明確化するように思います。

さらに脳の構造と心理との関係の研究が進むと、勉強の得意不得意、生活習慣、仕事やスポーツの向き不向きなど、様々な分野・業界で、脳の構造の属性に基づいた分類や適正評価が広まっていくかもしれません。ちょっとアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のようで怖い気もしますが、そもそも的な失敗のリスクを小さくしたり、自身が考えもしなかった成功への道を発見するきっかけになったりと、ポジティブな側面の方が多そうです。

では、また次回に!

 

(*)引用させて戴きました論文です。

Individual Differences in Marketing Placebo Effects: Evidence from Brain Imaging and Behavioral Experiments

http://journals.ama.org/doi/abs/10.1509/jmr.13.0613

 

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