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20155/11

電気ショック(tDCS)で脳力を高める

 

頭に電流を流して脳力を高める方法が、広まりつつあることはご存知でしょうか?

tDCS(transcranial Direct Current Stimulation、経頭蓋直流刺激)といって、脳を電気刺激する方法(ちょっとした電気ショック)です。

 

tDCSは、頭部2カ所に電極を装着して、弱い直流電流(1~2mA程度)を流します。すると、うつ病、ADHD、片頭痛、脳卒中回復などの疾患に対してのみならず、記憶力、IQなどの学習に対しても効果が報告され、2000年ぐらいから導入と研究が進められている新しい方法です。

イメージは、肩こり緩和用の電気マッサージ器が、脳に利用されていると考えるとわかりやすいかもしれません。下の写真は、市販品としてもっとも有名なfoc.usのtDCSの機器です。頭部の密着された水色のところ(スポンジ)から電流が流れて、脳を刺激します。

http://www.foc.us/

 このtDCSの最大のメリットは、誰でも簡単に電気刺激できることです。そして、副作用もほとんど報告されていないことから、脳に魔法をかける装置としてあらゆる業界から高い期待が注がれています。

ところが先日、tDCSは学習効果に影響しないという研究のレビューが発表されました。レビューでは、tDCSの機器を装着して電気刺激したグループと、しなかったグループに分け、知能と学習の効果を59もの分析から評価しました。

詳細は省きますが結果は、二つのグループに差がないことが明らかになりました。つまり、効果がないということです。期待が高かっただけに、悲しくなりますね・・・。

 

他方、tDCSの新たな方法の提案とその有効性も検証され始めています。

その一つが、tACS(transcranial Alternating Current Stimulation)です。違いは、直流刺激(Direct Current)をするtDCSに対して、tACSは交流刺激(Alternating Current)であることです。

実は、脳の中の電気的な活動の多くは、直流的ではなく交流的であることがわかってきています。特定の部位内、部位間などの脳活動において、さまざまな重要な周波数が発見されてきています。

研究者らはこの点に注目して実験を進め、最近の報告では、α波帯域の10Hzで電気刺激することで創造性が高まることが認められました。脳の働きの仕組みに応じて電気刺激する方法が、より有効だったようです。

 

彼らの研究が進めば、アイデアがどんどん浮かんだり、リラックスが簡単にできたり、勉強や仕事がはかどったりと、日常がさらに素晴らしくなりそうです。スポーツジムや自宅で、脳をフィットネスしたりヘルスケアする未来は、案外近いのかもしれません。

とはいえ、まだまだ発展途上の方法であることは確かです。数日、数週間と長期間にわたる効果の評価に至っておりませんし、刺激方法、刺激する場所、刺激と組み合わせる課題など、検討すべき方法は山積みです。

脳科学のニュースはインパクトが大きいので日進月歩に見えますが、「1日1歩、3日で3歩、3歩進んで2歩下がる」が現状です。トライ&エラーでしっかりとした知見を積み重ねて、安心できる脳科学を築いて欲しいですね。

では、また次回に!

 

(補足)直流と交流の違い

直流とは、電気が変化せずに一定に流れます。例えば、豆電球を乾電池に接続した時に流れている電気です。

一方、交流は、電気が周期的に変化して流れます。例えば、家庭で利用する電気です。最近の家電製品ではヘルツフリーの製品が普及してほとんど聞かなくなりましたが、一昔前では、東京で購入した家電製品を大阪にもっていくと、周波数が違って動かない!!、なんていうことがありましたね。これは、東日本では50Hz、西日本では60Hzと異なる周波数で電気が供給されているからでした。

DCAC

 

(*)引用させて戴きました論文です。

Quantitative Review Finds No Evidence of Cognitive Effects in Healthy Populations From Single-session Transcranial Direct Current Stimulation (tDCS)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25701175

Functional role of frontal alpha oscillations in creativity

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0010945215001033

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