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毎回褒めることは、全く褒めないことと同じ?
本日は、脳科学からわかった褒め方のポイントについてです。
「褒めること」が、人のモチベーションを高め、維持する最も重要だということは広く認知されている通りです。皆さんも、部下、同僚、上司、顧客、生徒、ママ、パパ、子どもなどに対して、彼ら彼女らのモチベーションを高める時、褒めることはよくあることかと思います。
ただ、一部の方は経験的にお気づきかしれませんが、問題があります。時が経つにつれて、褒められることに慣れてしまって効果が小さくなる、最悪の場合は効果がなくなることがあるということです。
心理学では、褒めるなどの言葉によって報酬を与えることは「内発的動機づけ」といい、モチベーションを「長期的」に高める有効な方法と考えられています。この褒められることによって、脳と行動の関係にある事が起きています。
脳は嬉しいと感じたとき、ドーパミンという物質を放出します(快楽物質として有名ですね)。そして脳の中では、ドーパミンが出る前に行われていた行動が強化されます(専門的には強化学習と呼びます)。つまり、褒められて嬉しく感じてドーパミンが出る結果、成果や結果を出すという行動が強化されていたのです。
ただし、この強化は、ドーパミンが出る前(褒める前)の行動に対してですので、行動とドーパミンの出るタイミングがずれると効果がなくなります。ある行動をしたら放置せず、すぐに褒めることが行動をより強化する=モチベーションを維持する大切なことです。ただし、褒め方も勿論ですが、褒める頻度がモチベーションを維持する重要なポイントであったことは、あまり知られていなかったようです。
ケンブリッジ大学のシュルツ博士らがサルで行った実験です。
サルはある課題を出され、正解すると報酬としてジュースを与えられます。この時、脳の中にあるドーパミンを出す神経細胞の活動を記録しました。ただし、正解した時に与えられる報酬の確率を変えていました。ここが本実験のきもです。あるときの報酬を与えられる確率は75%、あるときは25%、そして全く報酬を与えられない0%の条件もありました。
実験結果です。
100%の確率で報酬を与えられたとき、ドーパミンを出す神経細胞の活性は低く、驚くべきことに0%の確率の場合と近い傾向にありました。つまり、常に褒めることが、全く褒めないことと似た脳の状態にしていたのです。残念な結果ですね。
しかし、50%の確率の場合ではなんと、最も高い神経細胞の活性を示したのです。このことから、モチベーションを維持するためには、褒める頻度は50%の確率、2回に1回、褒めたり褒めなかったりを繰り返すことが効果的な褒め方ではないかと考えられるようになりました。
ただし、だからといって、2回に1回は全く褒めも何もしなということは問題になりそうです。むしろ、気分を害させたり、誤解を生むことになりかねません。だれだって賞賛の言葉は欲しいものです。ですから、褒めないときは「ありがとう」、「おつかれさまでした」などの感謝の気持ちを伝えるなど、不快な気持ちにさせないようにも心がけることも大切ですね。
2回に1回は褒める、2回に1回は感謝する。モチベーションを維持するポイントです。
では、また次回に!
(*)引用させて戴きました論文です。
Discrete coding of reward probability and uncertainty by dopamine neurons.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12649484