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覆る脳科学の常識
私たちの脳に、神経細胞が何個入っているか知っていますか?
1万個?
1億個?
いえいえ、もっとです。
一説では、1000億個以上の神経細胞があると言われています。すごい数ですね。世界人口70億人のおよそ14倍です。そんな膨大が数の神経細胞が、すぽっと頭の中に入りこんで、私たちの認知、感情、行動を作り出しているのです。
ある時は無意識の中で、ある時は意識の中で、1000億個以上の神経細胞がお互いにコミュニケーション、つまり、会話しながら作っています。脳は、とてつもなく凄いシステムなのです。
その凄いシステムをもつわたしたち人間の脳は、言語に関する脳が非常に発達しています。言葉を聞き、言葉を理解し、言葉を話すことを作り出す脳です。音を聞き分けたり、意味を判断したり、単語を思い出したり、口を動かしたりと、いろいろな脳の部位がコミュニケーションすることで会話を円滑に進めることができます。
言語に関する脳の部位って?
代表的な部位は、ウェルニッケ野とブローカ野です。
ウィキペディアより
ウェルニッケ野は、言葉を理解するはたらきの部位、ブローカ野は、言葉を話すはたらきをする部位です。ブローカ野は、言葉を発するノド、唇、舌などを動かすはたらきがあることから運動性言語中枢とも呼ばれており、19世紀にフランスのブローカ医師が発見した古くから知られる有名な部位です。
ところが先日、100年以上信じられてきたブローカ野のはたらきが異なるのではないかということが、米国のジョンズ・ホプキンス大学らの研究者によって発見されました。
実験は、7名のてんかん患者の協力を得て実施されました。てんかんの治療中、脳のブローカ野などにシート状のセンサー(電極)を128個配置し、言葉を聞いて、その言葉を話すという課題を行っている時の脳の活動を測定しました。
本研究報告ではなく参考としてですが、脳の表明にシート状のセンサーを配置したX線写真です。赤い枠の中にある白い水玉のような斑点が、脳活動を記録する一つ一つのセンサーです。人での研究を進める米国はすごいですね。
https://www.pinterest.com/pin/492933121688438906/
実験結果は、なんと、言葉を話すときに活動するはずのブローカ野が、静かになってしまっていたのです。言葉を話すときはブローカ野ではなく、より運動に関する脳の部位がしっかり活動していました。
ブローカ野は何をしているの?
びっくりしたことに、言葉を話す前に活発な活動をしていたことがわかったのです。つまり、これまで信じられてきた言葉を話す運動を指示するのではなく、言葉を話すために必要な情報を集め、話すための運動の情報を指示する、ハブ的な重要な役割をしていたのです。
1000億個もある神経細胞、言語に関する神経細胞も膨大な数になります。これら様々な神経細胞や部位とやり取りする上で、取りまとめる機能は大切な役割です。脳がいきなり行動するのではなく、情報をとりまとめて適切に行動するコミュニケーションのしくみを備えていたとは驚きですね。ひょっとすると人間世界は、自然に脳を模倣しているのかもしれません。
ところで、本研究のインパクトは大きいように思えます。脳梗塞などのリハビリテーションや失語症の治療などに対して、これまでは異なったより効果的な治療方法の開発などの医療的な貢献に加え、赤ちゃんの言語発達や私たちの社会性などの脳科学研究の実験方法や解釈にも影響を及ぼし、脳の活かし方が変わっていきそうです。
脳科学の研究は日進月歩で、本報告のように常識が覆ることがまれにあります。しつこいですが、1000億個も神経細胞がありますし。むしろ、覆るようなブレイクスルーによって脳科学を活かすアイデアが生まれ、社会が大きな発展をするといっても良いかもしれません。脳科学は、最高にエキサイティングな科学です!
では、また次回に!
(*)引用させて戴きました論文です。