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理由のつけやすさで好き嫌いを決めている?
~コカ・コーラとペプシコーラのブラインドテイスティングから~
何かを評価するとき、評価の「理由」を考えること、よくあるかと思います。化粧品、デザート、洋服、ワインなどの商品、店舗、接客のサービス、従業員や同僚の人事など、理由をさまざま考えて評価しているのではないでしょうか。
では、その評価、果たして妥当と言えるのでしょうか?
ある心理実験の結果、妥当とは言い切れないようです。
どうやら、評価の「理由」を考えることが、評価の妥当性に影響しているようです。理由を考えずに評価できるか!と、一喝しそうですが、まず心理実験を見てみましょう。
コカ・コーラとペプシコーラのブラインドテイスティング(**)の心理実験です。
グループの作り方がユニークです。グループは3つ、「好きな理由を回答して評価するグループ」、「嫌いな理由を回答して評価するグループ」、「理由を回答せずに評価するグループ」です。つまり、考える理由(好きな理由か嫌いな理由)、または理由を考える/考えない、によって評価が異なるのか?を、3つのグループに分けて実験しました。
心理実験の結果です。
「好きな理由を回答して評価するグループ」ではペプシコーラの評価が高く、「嫌いな理由を回答して評価するグループ」では両者の評価に差はなく、「理由を回答せずに評価するグループ」ではコカ・コーラの評価が高くなりました。
評価、ばらばらです・・・。
ブラインドテイスティングの方法ならば、3つのグループ間で評価は同様になるはずです。しかしながら、「好きな理由を回答して評価するグループ」と「理由を回答せずに評価するグループ」では、評価が逆転しています。
なぜ、考える理由(または理由を考えない)によって評価が異なったのでしょうか?
非常に難しい問題ですが、心理学、経済学では、このような現象の有力な解釈として、「理由に基づく選択」という仮説が提唱されています。人は理由をつけやすいという視点から選択肢を選ぶという考え方です。つまり、理由のつけやすさ=言語化の容易さの影響があるということです。
当たり前ですが、言語化された言葉がポジティブな印象なら評価は良くなり、ネガティブな印象なら悪くなる傾向にあるからです。実験の回答結果も、ポジティブな理由が回答されると評価が高まり、ネガティブだと評価が低くなる傾向を示しました。
また本実験、コーラの成分について事前調査が実施されていました。ペプシコーラはコカ・コーラより、「甘さ」と「コーラ風味」というポジティブな成分を強く感じさせる傾向が認められました。
これらの傾向が示した通り、「甘さ」と「コーラ風味」を主とするポジティブな言葉で理由づけ(言語化)がされやすかったペプシコーラは、好きな理由を回答しようする行為によって「理由に基づく選択」を促され、評価を高めたと考えられます。
結果、ペプシコーラと比較して、ポジティブな言葉での理由づけ(言語化)がされにくかったコカ・コーラは、「理由を回答せずに評価するグループ」で高かった評価が「好きな理由を回答して評価するグループ」で逆転する現象を生じたと考察しています。
なお、「苦味」などのコーラの美味しさを損ねる成分の特徴については両者に差がなく、実験結果においても、嫌いな理由を回答するグループでも違いを生みませんでした。これは、理由づけ(言語化)がされにくかったことの影響ではないかと考察しています。
言葉による評価方法では、理由のつけやすさ(言語化の容易さ)が好き嫌いなどの評価に影響することは免れないようです。これは、今回のようなブラインドテイスティングに限らず、ホームユーステストや実体験調査など、五感を評価する調査方法全てにあてはまることでしょう。このような調査では、言葉で回答する調査に加えて、直接感覚や無意識を測定するニューロマーケティングのような調査を実施することで客観性を高め、調査結果を見誤らない対策が不可欠です。また、ブランディングでは、言語化しやすいポジティブな印象を競合よりも強く特徴づけていくことも、重要な戦略となりますね。
では、次回に!
(*)引用させて戴きました論文です。
The effect of an analytical appreciation of colas on consumer beverage choice
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0950329313002231
(**)ブラインドテイスティングとは、ブラインド=盲目のとおり、ラベルや容器を隠すことで、テイスティングする飲料(商品)の事前情報をもたず、純粋にテイスティングして五感(主に味覚)のみで評価する方法です。