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GAP、新ブランドロゴの失敗
2010年10月4日、GAPが新ブランドロゴを変更しました。
ところが、新ブランドロゴの発表直後から批判が相次ぎ、インターネット上でも炎上する騒ぎとなりました。
あまりの評判の悪さから結果、2010年10月12日、わずか10日あまりで元のデザインに戻すという前代未聞の事態となりました。
この厳しい批判にさらされた新ブランドロゴは、どんなデザインだったのでしょうか?
親しまれてきた旧ブランドロゴは、濃い青色の四角い背景に白抜きされたGAPの文字でデザインされています。新ブランドロゴでは、黒文字に変わり、Pの右上に青くグラデーションがかかった小さい四角が重ねられています。
このデザインの何が、受け入れられなかったのでしょうか?
世界中で様々な議論がなされましたが、ニューロマーケティングを活用して潜在意識の観点から考察した調査があります。米ニューロフォーカス社(現ニールセン)の調査です。
ニューロマーケティング調査の結果から、4つの敗因がわかりました。
#1.私たちの脳は、失敗したGAPの新ブランドロゴのように言葉がイメージと重なっている場合、単語を無視してイメージに集中する傾向がある。従って、青い四角い囲み上に置かれた「P」の文字は無視しやすく、GAPのブランド名にとっては大きな失敗である。
#2.私たちは自然の中で、鋭いエッジが脅威(危険)であるとして生まれつき避ける傾向がある。湾曲した「P」の文字に切り込む四角い囲みの鋭いエッジは、魅力を削いでいる。
#3.脳には、少し斬新にアピールすること。旧GAPの書体は、目立つのに十分独特なものであった。他方、新ブランドロゴの書体は、世界中に使用されている画一的な古いヘルベチカ書体であった。
#4.脳は、高いコントラストを好む。旧ブランドロゴでは、白色の文字が濃い青を背景に「ポップ」であるが、新しいロゴでは、青色のボックスが黒/白のコントラストを弱めている。
また、この結果から以下のようにも主張しています。
ブランドロゴにおいて、
#1からは、画像と色の関係が重要、
#2からは、形状とその距離関係がポイント、
#3からは、ユニークであることが大切、
#4からは、コントラストが重要である。
ナイキ、ラコステ、フェデックスのブランドロゴは、これらのルールを全て活かした偉大な例である。色、形、割合、シンプルさ、コントラスト、独自性の重要性はデザインの基本原則の一部であるが、GAPの新ブランドロゴは、明らかにこれらのルールの多くに違反している。
勿論、これらのルール以外にも親近性(単純接触効果)など、考慮すべき要素はありますが、ニューロマーケティングを活用することで、少なくとも上記4つのルールに違反していないか、ルールの各要素がどの程度効果的なのか、潜在意識(無意識)のレベルで評価することができます。
もし、変更前にニューロマーケティングによる調査が実施されていたならば、上記のインサイトとその改善によって、前代未聞の大失敗を防ぐことができたのではないでしょうか。
きもちをしっかり読み取って活かすマーケティングアクション、重要ですね。
次回も引き続き、ニューロマーケティングの事例を紹介させて戴きます。また次回に!
(*)引用させて戴きました、ニューロフォーカス社の調査結果に関する記事です。
Gap and the Neuroscience of Logo Design
What neuromarketing can tell us about logos (and why designers already knew it)
http://scienceline.org/2010/10/gap-and-the-neuroscience-of-logo-design/