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消費者はウソをつく?
「消費者はウソをつく」というフレーズ、聞いたことはありませんか?
調査業界では、「消費者の声を聞く」ことが「消費者を知る」ことには必ずしもつながらないということが話題になっています。
それは、消費者はウソをつくことがあるからです。
さらには、消費者自身が気づいておらず、無意識にウソをついている場合もあるからです。
面白い研究があります。
スーパーに訪れた買い物客に2種類のジャムを試食してもらい、どちらのジャムが好きか尋ねます。
買い物客は、どちらか好きなジャムを選択します。
例えば、ブルーベリージャムとクロスグリ(ブラックカラント)ジャムを試食し、ブルーベリージャムを好きだと選択したとします。
そして、好きだと選択したジャム(ブルーベリー)をもう一度試食し、なぜ選んだのかを言葉で説明してもらいました。
ここが、面白いところです。
実はこのときに試食した容器は、好きだと選択してない方のジャムにすり替えられていたのです。
つまり、好きだと選択したブルーベリージャムではなく、クロスグリジャムを再度試食し、クロスグリジャムについて説明していたのです。
33%。
なんと、ジャムがすり替わっていることに気付いた買い物客は、たったの33%でした。
明らかに味が異なるシナモンアップルジャムとグレープフルーツジャムの組み合わせであっても、約半数の買い物客は気がつきませんでした。
買い物客は、好きだと選択していないジャムについて、説明していたのです。
このように様々な研究や市場調査の結果から、自身の決断や行動をしっかり把握することは難しく、その理由を正確に説明することができない場合がある、言い換えれば、無意識にウソをついている場合があるということがわかってきました(ジャムの研究例では、好きだと決断したことをしっかりと把握しておらず、すり替わったことに気づかず間違って回答)。
また、見栄や周囲の雰囲気によって、本来考えていた回答を変えてしまうことがあることもわかってきました。
むしろ、こちらの方が多いかもしれません。
では、消費者の声、本音を聞くことはできないのでしょうか?
できます。
100%本音を回答させる、100%ウソを見抜くという精度には至りませんが、言葉で説明するよりもより自然な状態で消費者に聞く方法があります。
ニューロマーケティングです。
ニューロマーケティングの方法は、脳波、視線、心拍、脈波、瞳孔、ホルモンなどの生体信号/物質を計測することで、言語化されていない無意識の行動やきもちを解釈することが得意です。
つまり、ニューロマーケティングの方法を活用することで、本人さえ気づいていない、答えようがないといった無意識を抽出することができるようになるのです。
次回以降では、このニューロマーケティングの実際、使い方や事例などを紹介していきたいと思います。
(*)紹介した研究について:
専門的には、選択の意図と選択の結果の違いを検出できない選択盲(Choice blinedness)と呼ばれる現象の実験報告です。ジャム以外に、紅茶でも実験しましたが、結果は同様でした。原著はこちらです。
Cognition. 2010 Oct;117(1):54-61.
Magic at the marketplace: Choice blindness for the taste of jam and the smell of tea.
Hall L1, Johansson P, Tärning B, Sikström S, Deutgen T.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20637455